概要
事業・課題の概要
火山災害による被害軽減のために、実効性の高い火山災害対策技術を開発する。そのためには、専門家(観測機関・研究機関)において「観測」から「予測」を踏まえた情報を迅速かつ正確に発信するとともに、自治体の防災担当者等がこれらの情報をわかりやすく理解し、的確な判断をするために活用できる技術を構築する。
成果目標及び実施方法
- “迅速性”の実現のため、無人機を利用して火山災害をリアルタイムで把握する技術を開発する。
- 観測から予測、対策への一連の流れを実現するケーススタディとして、桜島の噴火による火山灰ハザードをリアルタイムで評価し、地点毎に降灰確率を提示する手法を開発する。
- 火山災害に関わる自治体の防災担当者らが、災害発生時に適切な初動対応及び防災活動を行うことを支援するための「火山災害対策のための情報ツール」を開発する。
アウトプット・アウトカム
- 噴火時においてアクセス困難な場所へ無人機を投入し、情報をリアルタイムで取得し、火山防災・対策情報に資する
- 噴火発生前の確率的火山灰予測システムを完成させ、今後24時間以内に地点毎に降灰確率を提示する。
- 自治体等が災害予防及び被害拡大防止に必要な行動をとるための科学的根拠に基づく情報が得られるようになる。
- 【採択機関・事業責任者】
- 国立研究開発法人防災科学技術研究所
火山研究推進センター 特別研究員
中田 節也
本課題では,本火山プロジェクトの社会へのアウトプットとして最も重要な,火山周辺自治体や火山防災協議会に関わる専門家に,必要かつ分かりやすい「各種火山観測データや可視化した予測情報」を提供するための技術開発を行います.提供コンテンツは,課題A(各種観測データの一元化)と密接に連携しながら,火山災害のリアルタイム把握・降灰のリアルタイムハザード評価の手法開発による,避難救助支援・降灰被害予測情報を含みます.
- サブテーマ1
- 無人機(ドローン等)による火山災害のリアルタイム把握手法の開発
事業・課題の概要
噴火時における無人機(ドローン等)及び航空機による火口周辺や火山周辺から離れた空域から撮影した可視画像・赤外画像等を用いて、噴石の飛散状況、溶岩流や火砕流の発生状況やその到達範囲等の火山噴火の状況を迅速に把握するためのシステムを開発する。
成果目標及び実施方法
噴火時に火口近傍へ投入した無人機が段階的に解像度と観測範囲を変えて、現地でデータを取得してから“24時間以内“に火山技術者を通じて噴石・溶岩流等の特徴や経時変化状況に関して情報提供する。
- ドローンによる効率的なデータ取得手法の開発
- 段階的な現地データ取得による高精度化する手法の開発
- 地形変化、現在状況を短時間で可視化技術の開発
アウトプット・アウトカム
- 噴火時において立入規制区域の現地情報を取得
- 地形変化・噴出物の経時変化状況の提供
- 予測シミュレーション用の最新地形データの提供
- 被災関係者向けの可視化画像の提供
- 関係者からの要望を踏まえた現地情報の取得・提供
- 【分担責任者】
- アジア航測株式会社
技師長 千葉 達朗
“航空写真測量”“火山防災コンサルティング”が主力事業である会社として、保有する人材・情報・経験を駆使して噴火時の厳しい環境下における「UAVによる遠隔調査」「高精度なデータのリアルタイム計測」、「可視画像(赤色立体地図等)の解析処理の自動化」等の技術開発を行い、【火口近傍調査の自動化】の実現に向けて取り組んでいきます。
- サブテーマ2
- リアルタイムの火山灰ハザード評価手法の開発
事業・課題の概要
火山灰のリモートセンシング観測と火山周辺の風の観測を、従来型の火山観測及び降灰観測と結合させることにより、火山灰ハザードの予報的及び即時的評価のための技術開発を行う。さらに、噴火発生前の確率的降灰予測の技術開発を目指す。
成果目標及び実施方法
降灰量の予測精度を-50%~+200%とすることを目指す。
- リモートセンシングによる火山灰放出量の即時把握
- 火山観測データを起点とする火山拡散予測の高速度化
- 高空間分解能風速把握による火山灰拡散予測の高精度化
- 火山灰拡散予測のためのオンラインシステムの技術開発
- 火山噴火の統計処理による確率的降灰予測
アウトプット・アウトカム
- リモートセンシングによる火山灰量把握手法の確率
- 風速場の高分解能化による他の発散物への拡張
- 気象庁降灰予報への貢献
- 地域防災計画等への貢献
- 火山周辺自治体への予測データ即時提供
- 機関への予測データ即時提供
- 【分担責任者】
- 国立大学法人京都大学
防災研究所教授 中道 治久
桜島では噴火に伴い,多量の火山灰が周辺へまき散らされています.また,100年前の大規模噴火では東北地方南部まで火山灰が達しました.私たちは,噴火直後に,降灰の範囲と量がすぐにわかり,災害防止に利用できることを考えています.将来的には,降水確率予報のように,噴火が起こる前の降灰確率予測を目指します.
- サブテーマ3
- 火山災害対策のための情報ツールの開発
事業・課題の概要
本課題では、火山災害対策技術の一つとして「火山災害対策のための情報ツール」の開発を行う。この情報ツールを使い、他の課題で得られる観測データや解析結果等の研究成果を、火山災害に関わる自治体の防災担当者らに分かりやすく伝えることを目指す。また都市部における降灰リスク評価も行い、情報ツールを使った噴火発生時の降灰による被害予測につなげる。開発に当たっては、自治体防災担当者らと顔の見える関係を構築し、協力して開発を進めていく。
成果目標及び実施方法
- 近年火山災害に関わった自治体、及び既に火山災害対策に取り組んでいる自治体の防災担当者へのヒアリングを通し、災害発生時に真に必要となる情報が何かを把握し、それらの情報を適切に伝えるために必要な情報ツールの開発を行う。
- 降灰影響実験を通して建築設備等への降灰による影響を調査し、都市部における降灰リスクを定量的に評価する。
- 降灰のリスク評価から、都市部における降灰被害予測コンテンツの開発に繋げ、実証実験を行う。
アウトプット・アウトカム
- 情報ツールを利用して、火山専門家が自治体に対して平時及び火山災害発生時に適切な情報を提供できるようになる。
- 情報ツールを通して、自治体等が災害予防及び被害拡大防止に必要な行動をとるための科学的根拠に基づく情報が得られる。
- 都市部における降灰被害予測が可能になる。
- 【事業責任者】
- 国立研究開発法人防災科学技術研究所
火山研究推進センター 特別研究員 中田 節也
- 【分担者】
- 国立研究開発法人防災科学技術研究所
火山防災研究部門 主任研究員 宮城 洋介
火山災害は、火口からの距離と噴火規模に応じて、命を守る対策、日々の生活を支える対策、社会の営みを継続させる対策を進めなければなりません。本課題では、(1)命を守るために、火口近辺の登山客他への情報ツール、(2)日々の生活を支えるために、本プロジェクトの研究成果を自治体の防災担当者らに分かりやすく伝える情報ツール、(3)社会の営みを継続させるために、都市部における降灰のリスク評価を行い,降灰による被害予測を伝達する情報ツールの開発を目指します。